父の手

2/2
58人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
 父がこの十年、どんな風に過ごしてきたのかは知らない。ただ想像していたよりも老け込んでいた。あの時の変なおじさんに似ていなくもない。  ずっと心に引っ掛かっていた謎が解けた気がした。 「あれはパパだったの? 十年前の私を助けに来てくれたの?」  薄っすらと開いた父の目が、しっかり私を捉えた。 「紗枝。無事だったか」 「パパのおかげだよ、ありがとう。パパも早く元気になって。もうすぐおじいちゃんになるんだから」  私が大きなお腹をさすると、父は目を瞠った。 「子どもが生まれるのか⁉」 「そうだよ、パパの孫だよ」  そっと握った父の手は、やっぱり大きくて温かかった。 END
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!