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田んぼの真ん中で明るい光を放つコンビニは、不夜城のように見えた。
大型トラックが何台も停まれるだだっ広い駐車場。あの中の一つに乗せてもらったら、どこか遠くに行けるだろうか。
そんなことを考えながらフラフラと私が向かったのは、コンビニの店舗ではなく運転席で運転手が仮眠をとっている一台のトラックだった。
「行っちゃダメだよ」
ふいに後ろから声を掛けられて、ビックリして振り返った。男性が立っていたけれど、顔はよく見えない。それより、この人、いつの間に私のそばに来ていたのだろう。駐車場には誰も歩いていなかったのに。
「行っちゃダメだ。家に帰りなさい」
おじさんの手が私の腕を掴んだ。まるで私が何をしようとしていたか知っているような口振りだ。
「別に私……コンビニに買い物に来ただけですから」
「じゃあ、買い物したら、お父さんに迎えに来てもらいなさい。危ないから」
「平気です。近所なんで」
お節介なおじさんを突き放すように言い切って、私はトラックから離れて店に向かった。おじさんは私が本当に店に入るか見張っているみたいだ。仕方なく私はコンビニに入っていった。
ブラブラと店内を歩きながら外を見ると、おじさんの姿がどこにもない。え⁉ 今までそこにいたのに! 慌てて外に出たけれど、さっきのトラックが発車しただけで、他の車は一台も減っていない。どの車にも人は乗っていなくて、私はキツネにつままれたような気持ちになった。
家に帰ろう。何だか怖くなった私は、そのまま何も買わずに来た道を走って帰った。
翌朝目を覚ますと、夜中に近所で大型トラックが横転炎上したという話で持ちきりだった。もしかして私が乗せてもらおうとしたあのトラックだろうか。だとしたら私はあの変なおじさんに助けられたことになる。
でも、あのおじさんはどうして事故のことを前もって知っていたのだろう。
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