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揺れる気持ち
シャケのハラミ焼きにかぼちゃの煮物。冷や奴と味噌汁、お漬物にご飯。
素朴だがやさしい味でおいしい
「飯を食ってる時の城田の顔は幸せそうだな」
「どうせ単純ですよ、食べるの好きですし。でもハラミは脂がノッていて、とろっとしていておいしいし、カボチャはちょうどいい甘みが癖になります」
「やっぱり、今回はおごらせてくれ、いろいろと失礼なことを言ってしまって謝る機会がなかった」
それから、と言って内ポケットから端が擦れて、ずっと持ち歩いていたんだろうと思われる封筒を取り出すと目の前に置いた。
「食事代も受け取れない。あの時も酷いことを言った冗談のつもりだった。もちろん部屋なんて取ってない、本当にすまなかった。義弟のことも君には辛い思いをさせてしまった。食事も一緒に食べることが出来て楽しかったしお詫びだと思って欲しい」
ここで押し問答をしたところで話は終わらないだろうし、沖田部長が出向して2ヶ月一緒に仕事をしてきて考え方もすっかり変った。
こんな風に謝罪をしてくれて初めは嫌みで人を見下す最低な人間だと思っていたが、知れば知るほどこの人に惹かれていく。
妹の旦那と知らなかったとは言え不倫関係にあった私がこの人を好きになったりしてはダメなことくらいわかっている。
それに・・・この人からすれば私は大切な妹を傷つけた憎い女だ。
妹さんはどうしているんだろう・・・
「それから、一応報告しておくが香里奈には勘違いだと伝えている。」
ほら・・・牽制されてる
「よかったです」
黙り込んだ私に
「悪い、やっぱり必要ない情報だったな」
「いえ、妹さんを傷つけてしまったんじゃ無いかと気になってましたから、もう帰ります」
「送って行く」
「大丈夫です」
「本当に君は頑固だな!送って行くと言ったら送って行く!上司命令だ」
ムキになる姿が少し可笑しい、というか上司命令って「ふふ、そんなことが命令ですか」つい声を出して笑うと沖田は赤面させて横を向いてしまった。
こういう表情もするんだ。
ずるい
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