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別れ
「どうして・・・嘘を」
「初めて会った時に一目惚れして、食事をするようになってダメだと思ってもどんどん惹かれいった。でも紗季ちゃんは家庭がある人は恋愛対象にならないって」
「そりゃあ、普通はそうだろう」
沖田は呆れ顔でぼそりと呟く
「気がついたら廻りを固められて香里奈との結婚が決まってしまった。香里奈のことは好きだけど、でもオレは紗季ちゃんを・・」
「もう・・・やめよう」
「紗季ちゃん・・・」
スマホをテーブルの上に出し、彰の連絡先を表示させてから削除をする。
「安田さんも私の連絡先を削除してくだ・・さい」
最後は声が震えてしまった。
まだ、まだだ。泣いてはいけない
彰もテーブルの上にスマホを置いた
「紗季ちゃん・・ご・・」
先ほどから降り出した雨が激しさを増して声が聞えない。
「沖田さん・・・」
だめだ、まだダメ。堪えろ私!
「興信所を使ったそうなのですべてご存じだと思いますが」
興信所ということばに彰の体がピクリとする。
自分の名刺を沖田の前に置く
「ご迷惑をおかけしました」
もう少し、もう少し頑張れ私。
「慰謝料の請求があれば連絡してください」
財布から千円を取り出すとテーブルに置いて店を出た。
雨は激しく靄がかかるほどだが、涙を隠すには丁度いい
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