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やっかいな相談
リビングのソファに座る香里奈は有名ブランドのワンピースにストールを巻き、綺麗に巻かれた髪。小ぶりだが誕生石だという赤い石のピアス、長く整えられた爪は綺麗にネイルが施されデコレーションされキラキラと輝いていた。
娘を溺愛する故に夫の彰を要職につけ香里奈が困らないような給与を与えている・・・ようだ。
二人の生活には興味がないから実際の所は分らない。
分かっていることは、彰も嫁である香里奈を甘やかしすぎているように思う。
「それで?彰くんには聞かれたくない話ってことか?」
香里奈の大きな瞳からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
妹だとしても女性の涙を見るのは辛い、笑いすぎて涙が出ている姿を見るのは好きだが明らかにそういうわけではなさそうだ。
下手に声をかけるわけにはいかず、高速でコーヒーをドリップすると香里奈にカップを一つ手渡す。
話し始めるまで長期戦だろうか・・・疲れているが横になるわけにはいかない・・・
「はぁ」思わずため息がでると、香里奈は持っていたカップをテーブルに置いた。
「わたしが悩んでいるのにお兄様はため息をつくわけ?」
しまった、答え方次第では面倒くさいことになる。おかげで、営業先での対応が上手くなった。
「すまない、ここのところ仕事が立て込んでいて睡眠が足りないんだ。決して香里奈を軽んじているわけではないよ、どうしたんだ?」
とりあえず答え方は当たっていたようで、香里奈から険がすこし取れたようだ。
「彰さんのことだけど・・・」
「彰がどうした?」
「・・・・・・・」
「浮気でもしたか?」
軽い冗談のつもりだった、おなじ社内で営業推進部の部長という肩書きをもち堅物という異名を持った男にまさかの浮気疑惑などあろうはずがなかったから。それなのに、香里奈はその言葉でさらに大粒の涙がボロボロとこぼれガッツリ入っていたマスカラが黒い川のように流れ出した。
失敗した・・・って、浮気?
「確かなのか?」
過呼吸気味で肩を大きく上下させながら
「ちょっと前から、なんか変って」
「変とは?」
「時々、すごく遅く帰ってくることがあって」
「あいつも忙しい部署にいるし、部長という重要な職についている。遅いことなんか当たり前じゃ無いか」
「でも・・・」
「おまえは一度も社会に出ること無く結婚したから、仕事ということが分って無いんじゃないか?」
「そもそも、あいつが忙しいのはおまえの為でもあるだろう?」
「分ってるけど、遅い日は・・・」
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