Story 1 雫が落ちる前に

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あの日から一年がたち、いまでは完全に同期のような関係性で、やはり年上の千堂は、私よりもしっかりとしているし、男の人だと思う事も多い。 今もそうだ。当たり前のように雨の中に行ってしまった。 私はエントランスの中に設置されている椅子に座り、窓ガラスに雨があたるのを見ていた。 そこへ透明のビニール傘を差した千堂が歩いてくるのが見えた。 千堂、濡れてる! 今は傘をさしてはいるが、買いに行くまでに濡れたのだろう。 明るいグレーのスーツは濃く色を変え、きちんと整えられていた髪からは、ポタポタと雨が落ちている。 傘を閉じて千堂が中へと入って来るのがわかった。
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