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「いいよ。タオル濡れる」
犬のように頭を振って水を飛ばそうとする千堂に、私はおもいきり背伸びをして髪を拭こうと手を伸ばした。
「ダメだよ。風邪ひく。雫が落ちてるよ」
ぎりぎり届きそうなところで、なぜか千堂が私の手を握りそれを阻止する。
「雫紀が落ちてよ」
誰もいない薄暗く静まり返ったこの場所に、いつもより低く甘い声が響く。
「え……?」
言っている意味が解らず、私は千堂から視線をそらすことが出来ない。
「雫紀が俺に落ちてきて。好きだよ」
はっきりと言われたその言葉に、私は目を大きく見開く。
ずっと私の片思いだと思っていた。いつも女の子から告白ばかりされている千堂にとって、私なんてからかうのにちょうどいいおもちゃのようだと思っていた。
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