Story 1 雫が落ちる前に

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ブワっと涙が瞳に集まるのが解る。千堂は私の手をそっと離すとフワリと頬を包み込む。 「その涙は嫌だから? それとも?」 涙が零れ落ちるのを見て、千堂は少し不安げな表情を浮かべて私を見た。 私はそっとタオルで千堂の髪に触れる。 「この名前が今日好きになった。こんなかわいげのない私を拾ってくれるの?」 少しふざけたように言った私に、千堂はやわらかな優しい笑顔で私の涙を指で拭う。
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