Story 1 雫が落ちる前に

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「前原。お前まだいたの?」 不意に聞こえたその声に、私はドキっとしながら振り返った。 「前原先輩でしょ。それに千堂こそ遅いじゃない」 ぶっきらぼうになってしまった自分に、私は心の中で盛大なため息をつく。 前原雫紀 23歳、短大を卒業後今の会社に入社し3年目。 肩までのブラウンの髪に、身長は153cmしかない。特に自慢するようなところもない平凡な顔。 そして、もっとも問題なのは、負けず嫌いで素直じゃない自分。 そして、今後ろから現れて、私の横で空を見上げながらぼやいているこの男は、千堂裕也。一つ下の後輩だけど、大卒だから年は一つ上。 営業アシスタントである私が担当する営業だ。
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