Story 1 雫が落ちる前に

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「先輩って誰?」 そう言いながらからかうように笑いながら、私の頭を撫でまわす。 「こんなちっこい先輩、先輩じゃないだろ?」 「小さいことは関係ないでしょ?」 雨でただでさえまとまりの悪い髪をぐちゃぐちゃにされ、私は文句を言いつつ髪を手櫛で整える。 「年だって雫紀の方が年下じゃん」 先輩と呼ぶように注意をすると、千堂はふざけたように私を名前で呼ぶ。 それが恥ずかしくて、嬉しくて私は照れ隠しのように怒ったふりをした。 「やめてよ。この名前嫌いなんだから」 シズキという珍しい名前な上に、〝雫”という漢字は落ちるイメージがあり私はあまり好きではない。 これは本当のこと。
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