崎谷先生

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崎谷先生

水色の空が、少し白く霞んでいる。春らしいうららかな陽気に、教室の空気も緩みがちだった。教室の正面では、ゴールデンウイーク中の注意事項なんかを、担任が話している。配られるプリント類は、いつもより多く、そのほとんどが校則からの抜粋だったり、職員室からの注意事項だったりしている。 「―――以上、短いとは言え、校則を破ることのないよう過ごすように。課題の提出には遅れないよう注意。各自、プリントを再確認。補習のない者から、帰ってよし」 先生の言葉で、教室のあちこちから椅子を引く音がする。鞄を抱えてあっという間に出て行く者も居た。 沙耶は机の上でプリントを整理しながら、教科書類を鞄に詰め込んでいた。教室の前方の席からやってきて、声を掛けてきたのは、幼馴染で親友の優斗だった。 「沙耶、今日どっか寄り道していこ? 折角で休みになるから、ちょっとくらい良いでしょ?」 にこにこと屈託ない笑みを浮かべながら、脇に鞄を抱えた優斗が言う。沙耶が応えようとする前に、教室の前方から声が掛かった。
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