崎谷先生

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「うら、高崎。岡本はこれから補習。余分な時間はないから、お前はとっとと帰れ」 沙耶の代わりに優斗に返答したのは、担任で数学教師の崎谷先生だった。 深い茶色のスーツに、リムレスの眼鏡。髪の毛は少し襟足が長く、切れ長の双眸は黒目がちで、端正な顔を、少し若く見せていた。 「なんなの、崎谷先生。そんなに生徒を邪険にしたら駄目なんじゃないの?」 「事実を言ったまでだ。ほんとに、岡本の点数、中間までにどうにかしないと、マズイからな」 先生に言われて、沙耶もちょっと恥ずかしくて俯く。始業式後の実力テストで、沙耶の数学の成績は壊滅的だった。二年生は、大まかな進路や、三年生の学力別クラス分けに影響のある、重要な時期で、だから先生も、新年度のしょっぱなから、沙耶の成績を気にかけていてくれていたのだ。 「…沙耶、そんなに悪かったの?」 「………学年、下から三番目」 うわ、と優斗が大きな目をより大きく見開く。流石にそこまでと思っていなかったのか、優斗は「じゃあ、頑張ってー」と言い残して、教室を出て行った。
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