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横尾先生
ゴールデンウイーク中は、通学の電車も空いていて、いつもの不快な感じはない。代わりに、いかにも行楽へ行くと思しき家族連れや若者たちの中で、一人制服を着て乗車するのは、ちょっと肩身が狭い感じがした。
駅へ着くと改札を潜る。すると、前方をスーツ姿の人が歩いているのを見つけた。少し猫背気味に歩いていて、折角のスーツが勿体無いその人は、崎谷先生だった。駅のロータリーを抜けて学校の方向へ伸びる道の先の交差点で、赤信号に捕まって、沙耶は先生に追いついてしまった。
「…おはようございます」
「おお、なんだ、岡本か。今の電車?」
「いえ、どうでしょう、先生とは一本違うかも」
一緒の電車だったら、改札で会ってもよさそうなものだ。少し前を歩いていたのだから、沙耶の電車がホームに入ったときに、丁度出て行った反対行きの列車なんじゃないかと思う。
電車の車内を思い出すと、先生のスーツ姿も、行楽に浮かれた車内からは少し浮いていたんじゃないかと思う。それが、少し申し訳ない。
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