横尾先生

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「…すみません、先生。私の為に……」 「あ? なんだ、気にすんな。他にも仕事があるから、どのみち学校には来なきゃならんからな」 「そうなんですか?」 特に沙耶の気がかりを払拭してくれようという感じは受けなかったので、先生というのは結構大変なものなんだと思った。学生が休みを満喫している間にも、仕事が待っているのだ。 …少し、沙耶の心が軽くなる。自分の為だけに学校に来て貰っているのだとしたら、やっぱり申し訳ない気持ちは抱えてしまうだろう。 「昨日出した課題、やってきたか?」 「あ、ハイ。…一応」 「ちゃんと時間かけて、見直ししたか?」 「はい、しました」 そうか、と先生は笑って、そうして沙耶の頭をぽんと撫でた。 先生の方が、十五センチほど背が高い。上から乗せられた手のひらが、意外に重たくてびっくりする。手が大きいか、沙耶の手よりも厚みがあるのかもしれない。
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