横尾先生

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信号が青に変わって、二人並んで横断歩道を渡る。並んでといっても、先生と生徒が対等に並んで歩くのもなんだかおかしな話だ。沙耶は一歩引いた距離で歩いていた。 「岡本は、家ではゴールデンウイークの予定はあったのか?」 先生が少し振り向いて聞いてくれる。東の空の陽の光を浴びて、髪の毛に光の粉が舞うようだった。 「あ、いえ、特には。…姉が、もう旅行の予定を立ててしまっていたので、家族では、特に」 「そうか」 先生が、前を向いたまま応えている。沙耶が、なんだろうと思う間もなく、先生は次の言葉を継いだ。 「じゃあ、時間中に問題集を八割解けたら、先生がジュースをおごってやる」 笑いながら言う、その言葉には、家族との時間を割いて来ている沙耶を思う気持ちが、きっと篭っていただろう。 「えー? ジュースですか? どうせなら、プリンとかが良いです」 「阿呆。ゴールデンウイーク中は、売店のおばちゃんは休みだ」 「そっか」 眩しい日差しの中、二人笑いながら歩いていく。補習の為の登校だというのに、沙耶の心には重りは全くなかった。
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