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オフィスはシーンと静まり返っていた。常に空いていた入口扉も閉まっていた。が、上部が透けた作りの為、中の様子が見える。
こちらに背中を向け立ったまま何かの作業をしている男性がいた。
まさか、あの後ろ姿は……!!
「美咲先輩……?」
急に後ろから声をかけられた。美咲が振り返ると後輩の真由が驚いた顔をして立っていた。
「あ、真由ちゃんおはよう。どうしたの?」
「あの、えっと、忘れ物を思い出して……」
美咲に問われ、真由は何故か動揺しているように見える。
「先輩こそ、どうしたんですか?」
「え、私?私は、その……」
美咲がどう答えようか、考えていると背後で足音がした。
それから、ずっと聞きたいと思っていた声。
「よぉ、山野じゃないか。なんか久しぶりだな。こんな所で二人して何やってるんだ?」
振り返ると矢嶋が立っていた。
話し声がしたので気になって来たのだろう。矢嶋がキラリと光って見えた。
「あ、こ、今度オフィスが移るって聞いたからさ」
「あぁ、そうなんだってな」
そう言うと矢嶋は中へ戻って行こうとした。
「矢嶋先輩!!待ってください」
急に真由が叫ぶと矢嶋を追って行き、いきなり背中に縋り付いた。
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