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「この色男が、後輩泣かせちゃって」
美咲は内心安堵しながら矢嶋を茶化した。
「うるせぇ。何で俺が別れた事知ってるんだ?」
しきりに首をひねっている。
矢嶋の後についてオフィスに入ると矢嶋は仕事をしていたらしい。
横に大きなスーツケースが二つも置いてあることに気づいた。
「矢嶋、旅行にでも行くの?」
「バーカ。旅行になんてこのご時世行けるかよ」
「あ、そうか。でもこんな大荷物……?!」
矢嶋は椅子を引くとグッタリ雑に座った。
「俺さ、住むトコ追い出されたんだ。その、彼女が結婚するんだと」
愛の情報は本当だったのか。
「えっと、本当?!」
美咲は心配そうな顔を作ったが、すぐに見抜かれた。
「ふーん。なんだもう知ってるのか。お前らさぁ、どんな情報網持ってんだよ」
「あ、うん、まぁね」
美咲は曖昧に笑って誤魔化した。まさか、情報通の愛から聞いたとは言えない。
真由も愛から聞いてチャンスとばかりに来たのかもしれない。
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