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「あのさ、聞いても良い?どうして彼女と別れたの?」
矢嶋がポカンと美咲を見た。
「なんだよ直球で聞いてくるな」
「だって、彼女とは付き合い長かったでしょう」
「まあな。学生時代からだからかれこれ十年弱になるのか……」
「同期の間では、そろそろ結婚するんじゃないかって話してたもの」
「うん。まぁな。俺も……だったんだけど」
矢嶋は苦虫を噛み潰したような、なんとも言えない顔をしているのが、マスクの上からでもわかる。
しかし、矢嶋の言葉は美咲の心をグサッと突き刺した。
あぁ、心が痛い。血が出ているかもしれない……
「アイツさぁ、地元で結婚式があるとかで未知のウイルスが流行る直前に実家へ帰ったんだよな。そうしたら急にこんな事態になっただろう?」
矢嶋は頭の後で腕を組み思い出している様子。
「それから、アイツの両親がこっちに戻るの心配して帰って来れなくなった」
「そんなことが……」
恋人が帰って来ないのは寂しいけど、実家にいたら安心な気もする。
「ところが、向こうで昔馴染みの輩が出張ってきやがって……」
えぇ?!うっそぉ。まさか、恋愛小説によくある展開ってこと……?
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