オフィス

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「そんでさ、アレだよ。取りあえずウチの実家に避難しようとしたんだよな。ところが帰るにしてもウチは田舎で、ばあちゃんじいちゃんが健在だから。ウイルスもあるし、母親から帰って来るなって言われてさ……」  美咲は同情しつつも頭の中で計算した。  きっとこのチャンスを逃せば一生後悔する。こんな奇跡は二度と訪れないかもしれない。  美咲は、ここ数年で一番の勇気を振り絞った。 「……大変だったのね。あのさ矢嶋。とりあえず家、来る?」  矢嶋が再びポカンと美咲を見つめる。  そりゃ、そんな反応にもなるでしょう。いくら同期とはいえね。 「ウチは、そんなに広くないアパートなんだけど一応二間あるの。それで、数ヶ月前まで弟がいたから家財道具揃ってるし」 「山野に弟いたか?イヤ、本当は彼氏なんじゃないのか?」  矢嶋が疑ってるような、それでいて心配そうな顔をしたように美咲には見えた。 「残念ながら違う。資格試験の為に一年位いたんだけど、無事に取得して実家に帰ったわ。こんな状況になる少し前に」 「……そうか。あー、山野もこんな状況の中一人だったんだな」  矢嶋はなんだかホッとしてるようだった。 「おかげで、ひとりごとが多くなったけどね」 「そうだな……山野、まぁ、助かる。部屋が見つかるまで邪魔してもかまわないか?」 「うん、もちろん。家はここから遠いし駅からも歩くけどいいかな?」 「それは問題無いだろう。今の仕事には全然差し支えないもんな」  意見の一致をみた二人。 「ところで、山野仕事はいいのか?」 「あぁっ、忘れてた。パソコン家だし」  美咲達は早速アパートへ行くことにした。
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