アパートにて

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アパートにて

 このドアの向こうに矢嶋がいる。  昨日までの美咲は、こんな現実がやってくるとは信じられなかった。  今、矢嶋は荷物の整理をしている。  オフィスから二人で帰宅すると、まず美咲は2DKの室内を説明した。弟が使っていたものだが、ベッドやデスク、本棚もあるしクローゼットも付いている。 「助かるよ。これなら、仕事もすぐ始められるな」 「うん。WiFiあるし、ここはその、彼女の家より広くないけど、外は静かだし空気も澄んでるの」  電車から降りて、矢嶋が驚いたように深呼吸していたのを美咲は思い出した。  実家の空気よりは薄いかもしれない。けれど、都会よりははるかにキレイなのは確かだ。 「そうだな、驚いたよ。山野こんなにいいところに住んでたんだな」  美咲は自分を褒められたように嬉しくなった。美咲もこの街を気に入っているから。 「私のお弁当と同じおかずになるけど、まぁいいか」  冷蔵庫を覗いた美咲は、手持ち無沙汰から矢嶋の為に昼食を作り始めた。美咲にはお弁当がある。準備が整ったところで、 「矢嶋、お昼ごはんできたよー」 「うっそ、まじか?!」と言いながら矢嶋が部屋から出てきた。 「山野ぉありがとう。俺、腹減ってたんだよ。ここの近くにコンビニあるから後で買いに行こうと思ってた」
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