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「いただきます!」
「どうぞ召し上がれ。いただきます」
二人で食べるお昼ごはんは格別だった。こんなご時世なので会話もせずに黙々と食べるが、美咲の心は喜びでいっぱいだった。
お茶を飲み落ち着いた所でマスクをつけた。
「山野、ありがとう。ごちそうさま。美味かったよ」
「お粗末様でした」
矢嶋が美味しそうに食べてくれたので美咲も嬉しい。
後片付けは、矢嶋がやってくれた。慣れた手付きで手早く食器を洗う様は、彼女との生活を想像してしまい正直妬ける……
「夕飯は、俺が作るよ」
「えっ?」
「俺さ、大学生の頃、居酒屋でアルバイトしてたから、ちょっとは作れるんだ」
……あ、思い出した。確か同期会でその話を聞いた事がある。彼女の胃袋を掴んだって言うアレ?!
「仕事終わったらスーパーヘ買い物に行こうか」
「そうだね。そろそろ買い足そうと思ってたから」
「じゃ、決まりだな。後で」
そう言うと、矢嶋は部屋へ戻って行った。
美咲は繰り返し会話を思いだしニンマリしてしまう。
あぁ、これは現実なの?!
もしかして目が覚めたら夢だったなんて事になったら、一生立ち直れないかもしれない。
そこまで考えてハッとした。違う違う。これは同棲ではなく同居なのだ。
儚い現実に美咲はため息をこぼすと「仕事しなきゃ」と一人つぶやきゆっくり立ち上がった。
コーヒーメーカーをセットして自室へ入った。
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