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デスクに座りパソコンを立ち上げている間にスマホをチェックすると、後輩の愛からメールと着信が数回入っていた。
「……気づかなかった。愛ちゃんなんだろう。あ、もしかして真由ちゃん……?」
急に現実に戻ったような気分。後輩の真由の事をすっかり忘れていた。
メールを見ようとして着信音がなる。慌てて電話に出た。
「もしもし、山野……」
「美咲先輩、石田です。富山の事で聞きたい事が」
「真由ちゃん、午前中にオフィスで会ったけど」
「オフィス……!先輩、何でそんな場所に行ったんですか」
「何でって……」
美咲が言葉に詰まっていると、
愛が強い口調で、
「美咲先輩、私のメール読んでくれましたか?富山が矢嶋さんの事を好きなので応援してあげてくださいって書いたんですけど」
えっ、うっそ?!
そんなの書いてあった……?
あっ!そういえば、矢嶋の事で頭がいっぱいで最後までメール読んでなかった。
たらりと冷や汗が背中を伝い落ちる。
「あの、ほら、私は矢嶋と同期だし、矢嶋の事が心配になったからオフィスに行ったんだけど……」
「それじゃ、富山の気持ちはどうなるんですか?!」
「それは……」
何も答えられず困っていると、いきなり横からスマホを取られた。驚いて見ると矢嶋だった。
「もしもし、矢嶋だけど。山野を責めるのは止めてくれないか?」
「えっ、矢嶋さん……ですか?」
「富山さんには悪いけど、俺は前から山野が好きなんだ。今日から山野と一緒に暮らす事になったから」
それを聞いた美咲は、思わず口を両手で覆った。
矢嶋はスマホを切ると美咲に返して来た。
テーブルの上にコーヒーカップが二つのっている。
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