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スーパーへの買い物は、二人手を繋いで行った。ずっと夢見ていた美咲は天にも登る思いだった。
矢嶋の突然の告白。美咲は嘘でも嬉しいと思った。コーヒーを飲みながら矢嶋は、
「アイツが実家に帰って、しばらくして未知のウイルスの流行が始まって。でも、ふとした瞬間に思い出すのはいつも山野だった」
「ちょっと前の同期会の時、皆が来れなくて二人で飲んだ事があっただろう?」
「うん、あったね」
「あの時から、何となくもっと山野のことが知りたいと思ってた」
矢嶋に見つめられた美咲の顔は真っ赤だ。
「こんな浮ついた気持ちでいたから、アイツにバレて振られたのかもしれない」
矢嶋が苦笑いをした後、美咲を見つめる眼差しは真剣で、
「俺は山野美咲が好きだ。急なことで驚いていると思うし、そんなつもりもなくこの家に連れてきてくれたんだろうと思う。けど、知っていてほしいんだ。
俺のことを好きになってくれるまで待つよ」
……矢嶋、本当に?
……これは現実の出来事なの?
美咲の瞳から涙が止めどなくあふれてとまらない。
「私ね、私。私、ずっと前から矢嶋の事が好きだった」
矢嶋がキョトンとしたのが分かった。そして、嬉しそうな笑顔に変わる。
すると矢嶋を覆っていた光が点滅し始め急に激しくなった。眩しくて目が開けていられない。
美咲はハッとした。こんなふうな眩しさをごく最近感じた事を思い出したのだ。
「あ、もしかして、あのお婆さんの……?!」
「お婆さんってなんだ?」
「あ、うん、こっちの話」
「それじゃ、仕事に戻るか。コーヒーありがとうな。後ほど」
矢嶋が部屋から出て行った。
美咲はこの急展開が現実のものとは信じられず、気持ちがついて行けないのも事実だった。
でも、一つだけ分かった事がある。
「矢嶋が私の運命の人だ」
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