美咲の現実

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「世界がこんなになる前は、年上の優良物件は、男を手玉に取る女たちに押さえられ介入の余地無しだったのよ。そもそもの独身貴族だっている。だから、積極的に婚活しないことには素敵な出会いすらなかった……それに昨今は同性愛だってあるものね?……実は殿方さえもライバルになっている現実って……はぁ」  美咲はまた、ため息をついた。 「だってだってぇ、本音を言えば結婚したいんだよぉ?運命の相手とやらが存在してるのだとすれば出会ってみたいって思うのは当たり前でしょ!って違う……?」  本音は不毛な片思いに終止符を打たなければと思い、全てを忘れるような出会いを求めているのだ。  美咲は缶を置くとベッドにゴロンと横になった。少し酔いの回った頭。ベッドサイドに置いていたスマホを片手に持つと、寝る前の儀式のようにアプリをタップしてWeb小説の世界にダイブした。 「今日の新作はっとぉ。……あっこれ面白そう」  短編の恋愛小説のようだ。  運命の人に出会うことを切望する主人公の元に、どこからともなく魔法使いのおばあさんが現れて、ラストは主人公がめでたく結ばれハッピー・エンドという話。  小説の最後に「貴方にも素敵な出会いが訪れますように」と締めくくられていた。 「ん?」  美咲が不思議に思ったのはタグに「#エッセイ」がついていること。 どんな間違いなの?と思わないでもない。
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