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「まあ、今回はたまたま誰か引き取ってくれたけどさ。今度捨て猫見かけたら、俺に連絡すればいいんじゃん?」
「え、でも連絡先知らないよ?」
「だから今から交換すんだって」
傘の中でやることじゃねーな、と笑いながらチャッキーはスマホを取り出した。片手で器用に操作して、トークアプリのQRコードを開いた画面をこちらに差し出す。
わたしも慌てて取り出して、トークアプリを開く。本当に、雨の中傘を差してやることじゃない。
「なんか今さらだよな。知り合って二年は経ってるし」
「そういえばそうだね。変なの」
そんなことを話しながら交換した彼のIDを見て、思わず驚きの声を上げた。
「千章だからチャッキーだったんだ!」
「え、知らなかったの? てかユッコちゃんこそなに? 結奈って。コ、付かねーのかよ。てっきりユキコとかだと思ってた」
「それには深ーい事情があるんだよ」
わたしが言えば、チャッキーは長い前髪の奥の目を細めた。
「じゃあ今度話して。他のことも。いつでもなんでも、話したくなったら連絡して」
「……ありがとう。チャッキーも」
どうしてそんなに優しいの? そう尋ねようとしたけれど、やめた。その答えは、これからたくさん話して知っていけばいい。
夕方降り出した雨がやまなくてよかった。 ここにブランコがあってよかった。今日という日があってよかった。
今はただ、それだけでいい。
「おう。じゃあ帰ろっかな。あ、近くまで送った方がいい?」
「ううん、すぐそこだから。ありがとう、おやすみ」
わたし達の横を、車が一台通り過ぎていく。タイヤが濡れたアスファルトを滑って立てた、サーッという音に乗せて。
「またね、結奈」
彼が、少し照れたような顔で言った。
~END~
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