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駅前の大通りを途中で小路に逸れれば、飲食店がぽつぽつと並ぶ景色の中、やや唐突に小さなブランコが姿を現した。
ワンボックスカーが一台停められる程度の敷地に、ブランコと石のベンチだけ。公園とも呼べないその空間はひどく場違いで、いつまで経っても見慣れない。
存在理由が気になるものの、考えたところでわたしにわかるはずもない。雨に濡れる寂しげなブランコを眺めながら、いつものようにただ通り過ぎようとして。
──どうして雨音は、それを消してくれなかったんだろう。
とても小さく、でも確かに聞こえてしまった鳴き声。ブランコの脇に不自然に置かれたダンボールの中身は、もはや見なくてもわかる。
小さな子猫が二匹、雨に濡れていた。やっぱりか、というため息を口からそっと逃す。
「あなた達、捨てられちゃったの?」
しゃがみ込み、無意識にそう話しかけてから、はっと気づいて苦笑した。「わたしと一緒だね」とでも言うつもりだったのか。バカバカしい。
それにしても、なにもこんな冷たい雨の日に捨てなくても。どういう事情かは知らないけれど、無慈悲にもほどかある。
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