猫を拾わなかった話。

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リョータが出してくれた三杯目のアードベッグに手をかけながら、チャッキーの方に向き直った。掌の中のひんやりとした温度が、外の冷たい雨を思い出させる。 「でもね、チャッキー。忘れちゃうのも忘れられちゃうのも、寂しくない?」 「うん、そうだね。……ところでさ、その子猫達、どんな猫だった? 種類は? 雑種? 色は?」 「え? えっと……雑種なのかなあ。片っぽはトラ柄で、もう片っぽはねずみ色?」 唐突な質問に戸惑いつつも、姿を思い浮かべて答える。あの子達は今もまだ、ダンボールの中で震えているのだろうか。そう思うと心が痛む。 「猫なのにトラとねずみに例えるって、なんかウケますね」 リョータが奥二重の細い目を瞬かせた。 「確かに。けどさ、不思議じゃない? 茶色を馬色とは言わないじゃん?」 「チャッキーさんそれ、茶色の動物いっぱいいるからじゃないすか?」 「え、それ灰色もそうじゃん。馬は茶色代表になれないってこと? いろんなもの差し置いて、デカいの代表にはなれたのに?」 「デカい? 馬力とかの話っすか?」 「いや、馬並み。ところでリョータ、馬?」 「オレ、人です。っておかしくないすか?」 二人の会話があまりにくだらなくて、ふふっと笑ったわたしに、チャッキーが「ねえユッコちゃん」と声をかけた。 「共有したから忘れないよ、猫のこと」 「え?」 言葉の意味を理解できず、首を傾げたわたしを真っ直ぐに見て、チャッキーは言葉を続ける。
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