猫を拾わなかった話。

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***** 「はい、今日はもう閉店な」 午前三時、店長に半ば追い出されるように店を出た。 雨はまだやんでいなかった。エレベーターが開いた途端、ザーッという雨音に迎えられ、頭をよぎったのはやっぱりあの猫達のこと。 飲めや歌えや楽しく過ごしたって、猫の件は結局なにも解決していない。思い出せばどうしたって気が滅入る。男と別れた事実も変わらない。 けれど、泥酔に近い状態の今、それでも猫達や男のことをちゃんと覚えていることに、何故か少しほっとしたのだ。 「忘れたいと忘れたくないって、同じなのかもね。忘れてほしいと忘れないで、も」 酔っているとなんでも口走るらしい。なんとなくそう呟けば、チャッキーは「うん、そうかもね」と笑った。 チャッキーの家は確かわたしとは真逆の方向だ。傘を開き、「じゃあまた」と告げようとしたところで、先に彼が口を開いた。 「そういえば、どこなの? 捨て猫」 「あー、うちの近くだけど。なんで?」 「見に行ってみようと思って」 「え?」 目的が全く理解できない。今さら見に行ってどうするのだろう。見かけてから五時間は経っている。ひょっとしたらもう……無事ではないかもしれないのに。
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