猫を拾わなかった話。

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「……なんで?」 「気になるから。ユッコちゃんも来る?」 ぶんぶんと頭を横に強く振った。 気にはなる。けれど行ってどうするのだろう。なにもできないのに。死んでしまっているかもしれないのに。 見に行くどころか、わたしはしばらくの間、あのブランコの道を避ける気でいた。見ないふりをして、どこかで元気にやってると思いたいのだ。 「じゃあ、近くまで案内してよ」 「でも……」 「こんな言い方あれだけど、死んでるの放置すんのも可哀想だし。それに、無事だったら俺が連れて帰るから」 「え?」 驚いたわたしに、チャッキーは「基本、捨て猫は拾う主義」とこともなげに笑ってみせる。聞けば、彼は以前捨て猫を保護し、里親を探したことがあるそうだ。 どうにも引いてくれそうにないので、結局連れていくことにした。もちろん近くまでだ。 「あそこの……とんこつラーメンの隣」 雨の中、少し遠くから、もう消えているラーメン屋の看板を指さした。 「うん、ありがと。じゃあね、おやすみ」 チャッキーは手を振って、そのままブランコの方へと歩いていった。複雑な気持ちのまましばらく背中を見送り、ようやく踵を返したところで。 「ユッコちゃん! ちょっと来て!」 チャッキーの大きな声が、雨音を割いた。
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