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待つ
実は冒頭で、私には「親父の面影は無い」とは言ったものの、トラウマとも云うべき思い出だけがたった一つだが残っていた。
それが、翔太に使った禁じ手である。
あっ、そうそう忘れてましたが、お姉ちゃんは無事、合格・・そもそも心配するような、そんなムズイ高校でも無かったようだ。
勿論、翔太も泣いて喜んだ。翔太が喜んだ本当の理由など、聴くまでも無いが。
私の記憶ではこうだ。
6~7歳の頃だったか? 年齢はともかく、家族中でデパートのおもちゃ売り場に行った時の思い出だ。
「浩司・・さっきから、えらい大人しいと思たら、夢中になって何見てるねんや?」
実際はこんなに詳しくは記憶している訳では無い、でも最近でこそ見ないが、これまで何度も夢の中に現れたストーリーを編集すると、このようになるから小説は面白い。
「汽車や! お父さん、あの汽車見ててや・・あの鉄橋過ぎたら、じきにこっちに来るで・・」
私は、おもちゃ売り場一杯に敷き詰められたレールの上を走る汽車を指さした。
「ホンマやな・・本物みたいやな⁉」
「ウン・・カッコええやろ⁉」
「浩司・・欲しいんか?」
「えっ、買(こ)うてくれるの⁉」
「買うたるけど・・今日やないで、浩司の今度の誕生日が来たら買うたる!」
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