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初恋と黒歴史
「そういえばさ」
隣に座る旧友がおもむろに口を開く。
「何?」
「何年か前にさ、たまたま見かけた金髪の女性が僕たちの学校にいたの覚えてる?」
「え、うーんどうだったかしら……覚えてないわ」
「嘘だよ、だってあんなに目立ってたもん。でも名前は聞いたことなかったけどさ」
「たまたまじゃないかなあ、1年生のネイティブの先生だったのかもよ?」
「いやいや、制服着てたから生徒だよ」
なかなか引き下がってくれない……。やめて、それ以上は追及しないで。それ、私だから!!
せっかく君の好みだっていう見た目に寄せて今までの過去も捨てて磨き上げてきたのに、なんでいまさらそんな話題を出すのよ……!
とにかく、バレないようにしなきゃ。
「僕、あの人のこと格好いいなって憧れてたんだ。一回だけ話したことがあって。たぶん、あれが初恋なんだ」
へへっ、と、照れたように君は笑った。
そのたった一回の会話で、私の方も君に惚れたなんて今更言えようか。
「なんてこった……」
私は君に聞こえないようにあの頃の口調で独り言ちた。
お題「苦しみの経歴」
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