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髪型と雰囲気は違うけど、私の奥深いところで、目前の彼はひかる君だと訴えている。
不思議すぎて信じられないけど、でも。
目の前に居るのは、ひかる君。
確かにひかる君だ。
「ひかりちゃん……」
ひかる君の声だった。
なんだ、最初からひかる君は、ちゃんと私の傍に居てくれたんだ。
「……ひかる君」
「ほんとに、ひかりちゃんなんだね」
髪は茶髪だし、派手なオレンジ色のTシャツ着てるし、私の知ってるひかる君とイメージが全然かけ離れてて、しかも大学生。
でも、私を真っ直ぐ見つめる澄んだ瞳は、バス停で出逢ったひかる君と同じだった。
「こんなに近くに居たのに、私、気付かなかった……ごめんね」
以前より大人っぽくなったひかる君は、俯いてジーンズのポケットに親指をそろり、と差し込んだ。
なんだか照れてるみたいに。
「俺も、軽薄だったよね。ひかりちゃんにそっくりな女の子に出逢えて、舞い上がっちゃって。……大学デビューだし」
「大学デビュー?」
彼の指先が、ふわふわの前髪をクルンと摘まんだ。
「俺、高校入学してすぐに長期入院になったから」
「入院?」
ああそうか、私が出逢ったひかる君は入院中で、病室に携帯を持ち込めなかったのだ。
私が出逢ったのは目の前のひかる君の、過去のひかる君。
何が何だか不思議すぎて、私の頭は混乱中だけど、でも、ひかる君と過ごした光景は覚えてる。この場所がバス停じゃないのに、私はちゃんとひかる君を覚えてる。
「今度こそ、学校生活楽しみたくて」
「うん」
「ちょっと、色々突っ走りすぎたよね。ひかりちゃんにも引かれちゃってたしね」
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