傘越しに君と

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 このコンビニでは、従業員の個人情報を守るため、名札はひらがな表記になっている。  以前は名札を漢字表記にしていて、バックヤードのシフト表はフルネームで書かれていたらしい。    ところが、アルバイトの女子大生が変な客に名前を憶えられ、トイレを貸した時に事務所の履歴書を見られ住所まで知られて、ストーカー被害に遭った。  それ依頼、全ての店舗一律に名札はひらがな表記となった。  従業員同士でも下の名前は教え合わないよう徹底し、事務所に放置していた履歴書も、現在は本部が管理している。 「あ、そっち重いから俺が持ってく」 「どうも……」  私が冷蔵庫で飲料を出し始めると、きやまが来た。  レジ当番を終えると、次は商品の補充に移る。  レジの混み具合でヘルプに入るし、一時間後には冷凍食品の搬入だから、今のうちに素早く、商品棚の空きを埋めるのだ。  きやまが運んでいる間に、私は牛乳や野菜ジュースなどの一リットルパックの飲料を必要なだけプラコンに入れていく。 「次はこれ?」 「お願いします」 「まかせて」  アルバイト期間は、きやまより私の方が長いから、私が教えることが多い。けれど、きやまは飲み込みが早いのか、打てば響く感じで、仕事はやりやすかった。  あくまで、助かることが多かった。今後は名前くらい呼んであげてもいいかもしれない。
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