傘越しに君と

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♢ 「今日は雨の予報だったのにな」  残念な思いで見上げた空は、快晴だった。 「晴れ最高! やっと外走れる~」  マユは嬉しそうに言った。校庭利用解禁に、運動部員達は皆、喜んでいることだろう。 「でもさあ、ひかりが雨好きだなんて知らなかったよ。ちょっと意外」 「えっ、好きってほどじゃ……まあ、そうだね。雨の雫を眺めるのは好きかも」 「なんじゃそりゃポエマーか! じゃ、あたしは部活行くね、また明日!」 「ん、ばいばい」  ぶんぶん手を振ってマユが廊下に走っていく。先生に見つかったら怒られそう。  ――多分マユなら、きやまみたいなタイプが好きなんだろうな。イケメンだとか騒ぎそうだし。  ナチュラルに天敵の事を考えている自分に驚いた。  だめだ、あんな軽薄なヤツを大事な友達に紹介できない。そもそも、紹介できるほど仲良くもないけど。  私のことをよく知りもしないくせに「好きなタイプだ」とか言ってくるヤツになんか。  ――やっぱり私は、彼みたいに穏やかで誠実そうな人が理想だな  また。 「だから誰なのよ、彼って」  私、ヤバいかな。週四でバイトを入れてたけど、しばらくシフトの間隔を空けた方がいいのかも。  ぼんやり考え事をしていたら、教室は無人なっていた。 「うわ、時間がもったいない。帰ってDVD見たり漫画読んだりしよっと」  鞄を持ち立ち上がると、開け放した窓からびゅっと強い風が入り込む。鼻をかすめたのは、湿った空気、雨の匂いだった。 「雨……降るの?」  私は鞄を抱え、教室を飛び出した。
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