傘越しに君と

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 本当に、最近の私は変だ。    いつも誰かのことを考えているのに、そのくせ、それが誰なのか忘れている。どうにも思い出せない。  でも、身近に感じている。  違和感だらけ。  そして、雨。  雨が待ち遠しいなんて、過去になかった。特にお気に入りの傘は無いし、可愛いレインブーツも持っていないのに。  どうしてなんだろう。  雨の予報に、ワクワクしている自分がいる。理由がわからないのがもどかしい。  でも、理由(わけ)もなく持ちは(はや)る。  バス停に着いたときには、周囲は雨に包まれていた。  相変わらず人気(ひとけ)の無いバス停周辺が、夕方の雨に音を遮断されていて、しん、としていた。  無人のバス停を見たとき、私はがっかりしていた。また会いたいのに、いないんだと、残念に思った。  だから、誰?  どうして思い出せないの? 夢の記憶なの? 「バスが遅れてるみたいだね」 「えっ」  その声に、私は電光掲示板を見た。『次のバスの到着まであと8分です』って文字が流れていた。  ひかる君の顔を見た途端、鼻の奥がツンとした。 「あ、あれ……」 「どうしたの、ひかりちゃん」  ひかる君が、私の顔をのぞき込んだ。鼻を押さえて俯いてるから恥ずかしいのに、彼に名前を呼ばれて、私は嬉しくて、また鼻がツンとした。 「何でもないよ。雨の雫が目に入ったのかも」 「なんだ、そっか」  バスが来るまでの短い時間、私達はベンチに座っておしゃべりした。  ひかり君はハマっているゲームがあるらしくて、私も好きだからどんなのって聞いたら、シュミレーション系だって教えてくれた。
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