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思わず尻もちをついた私の周りは、元の静かな公園で――、弦の音ではなく、虫の音が聞こえる。
空は、いつしか白み出している。
「インドとつながった?」
「えっ。タマ、そのからだ……」
タマの体は透き通り始めていて、きゅっと細まった目がなんとかわかる感じで……。
「しょうがない。星は夜にしか見えないからね。
けど、大丈夫。全部つながっている。風は空に続いていている。風にのって空に帰るよ」
「タマ……いっちゃうんだね」
涙ぐむ私の目には、もうほとんどタマは見えない。
「トキワといた時間は僕もとても楽しかったよ。ありがとう。けどね、いろんなとこに行けて今も楽しいんだ。
トキワも楽しんでみて。このつながってる世界を……」
私の涙とともにタマは見えなくなった。
涙をぬぐったら、いないのがわかってしまうのが怖くてぬぐえない。
「タマ、来てくれてありがとう」
返事はもうない。
代わりに、まばゆい光が目にさしこむ。
日の出だ。
いつもと同じはずのその日の出は、涙をぬぐった私の目に今映る太陽は――、サバンナに浮かび上がるそれと同じなのではと、思えてくる。
どこからかライオンの咆哮が聞こえてくるような力強い太陽は、弱肉強食全ての生き物に降り注ぎエネルギーを与える。
その雄大な太陽に、私はつい拝みたくなった。
「いつもパワーをありがとう」
そう手を合わせて、私は「よし!」と気合いを入れて駆け出した。
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