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どれくらい泣いていただろうか。
街を見下ろせる丘の上の公園に、仕事帰りに独りで私はやってきていた。
もう街の灯りもまばらで、闇が濃い。
夜空に流れ星が通っても、なにも思わない。だって、流れ星はただの宇宙塵や隕石だ。願ってなんになる? 闇にのまれるかのように、顔が下を向く。
「はぁ……。タマ、また私怒られちゃったよ。怒られてばかり、ミスしてばかり……」
愛猫の名に話しかける。私の心の癒しだった愛猫。もう会えない愛猫に――
「トキワ、ゆっくり息を吸ってごらん」
「えっ?」
自分の名前を呼ばれて顔を上げると、またたく星を凝縮したかのようにきらめく猫が……⁉
「タマ、なの?」
思わず、愛猫の名を口にすると、星の猫はニャアと私にスリスリしてきた。
「僕、しゃべれるようになったし、いろんなところを巡ってるんだ。この世界はつながっているんだ。
トキワともつながってるから、来たよ。そしたら……トキワ、また泣いてるの? ゆっくーり息を吸ってみて」
突然やって来たしゃべれるタマに質問したいことは山ほどあるけど、私は言われるがままに、深呼吸をする。
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