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『生きている時でさえ苦しかったのなら、せめて死ぬ間際くらい電子の楽園に住もう』。
それがこの国を作り出した、ジェネラルサイド社のキャッチコピーだった。向こう側の世界の広告で、それを見ない日はない。電車の中、駅の中、車の中、家の中、スマホの中。私の両親もそれを見て、感化されて、一人娘の私を登録した。いじめに遭ってからろくに食事することもできなくなった、生きているか死んでいるかすらわからない、無気力な引きこもりだった私のことを。
どうせ死ぬつもりだったから、別にそれは良い。
きっと遅かれ早かれ、そうなると予感してもいた。
でも、予想外だったのは、やはり『雨』のことだった。
自分でも、なぜこんなに雨のことが気にかかるのか、不思議ではあるのだが。
この『楽園』には、雨が降らない。
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