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自分が昔言われた言葉を鈴木に言うと、鈴木は驚いた顔をしてフッと笑った。
「斎藤にその言葉言われるとはな」
「⋯⋯私はもともとがり勉じゃないし。ただ単に本読んでたら、鈴木が騒ぎ立てただけでしょ」
「わるいわるい」
鈴木が私の頭をポンポンとたたく。
「そんなことしたら、また勘違いされるでしょ」
高校一年生のころ、鈴木と私が恋人であるという噂が一時期流れたことがあった。きっと、距離が近いからだろう。
私は男子とあまりかかわらない。今でも男子にいじめられた記憶が残っているからだ。
⋯⋯私をいじめていた男子筆頭のこいつとはかかわりがあるっていうのも皮肉な話だけど。
「そうか? まぁ、勘違いされても別に良いけど」
さらりと吐かれたその言葉に、思わずため息が出る。
「そういうこと軽々しく言うの良くないって」
鈴木はいつものようににっこりと笑ってごまかす。
⋯⋯これ以上は言っても無駄だろう。
「斎藤、それでお願いがあるんだけど」
「⋯⋯なに? 」
「斎藤、日本史得意だったよな? 」
「⋯⋯得意って程でもないけど」
「そう? まぁ、俺よりは得意だろ。日本史教えてくれないか」
「日本史なんて覚えるだけでしょ」
「さっき言ってただろ。歴史は面白いって。面白いことを教えてくれ」
「⋯⋯急に言われてもなぁ。だって、テスト範囲のところでしょう? 」
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