1章

12/42

24人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
 そっちへもし行きたいのであれば、計画を変更しようと思って聞くと、鈴木はゆっくり首を振る。 「いい。大丈夫。何となく声に出しただけだから」 「そう? 」  鈴木がうなづいたのを見て、ならいいかと納得し改札を出る。 「じゃあ、まずは南禅寺行こうと思います。その後、お昼ご飯ね」  只今の時刻は11時。お腹がすいているかもしれないが、そこは我慢してもらおう。 「わかった。……斎藤ってさ」 「うん」 「どっか出かける時、必ず最初にどこ行くか言うよな。遠足の時もそうだったし」 「あー、うん。そうだね。なんか、目的地も知らずに歩くのしんどくない? それ目的で元より歩くつもりなら話は別だけど」 「そうか? 」 「私の場合はね。だって、何か道沿いに店が立ち並んでたりしたらいいけど、そういう所ばっかりじゃないし。だから、最初に目的地は言うようにしてる」 「……なるほどな」 「そうそう。っていうことで、南禅寺行きます」 「はーい」  鈴木が間延びした声を上げる。まだ眠そうだ。 「何時に寝たの? 」 「ん⋯⋯寝てない」 「え!? 寝てないの!? 」 「うん」 「なんで? 」 「なんでって眠れなかったから⋯⋯。斎藤はちゃんと寝れたみたいだな」  若干不機嫌な声で鈴木が言う。少し昔のことを思い出し、体が震えた。  ⋯⋯落ち着け。今と昔は違う。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加