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そっちへもし行きたいのであれば、計画を変更しようと思って聞くと、鈴木はゆっくり首を振る。
「いい。大丈夫。何となく声に出しただけだから」
「そう? 」
鈴木がうなづいたのを見て、ならいいかと納得し改札を出る。
「じゃあ、まずは南禅寺行こうと思います。その後、お昼ご飯ね」
只今の時刻は11時。お腹がすいているかもしれないが、そこは我慢してもらおう。
「わかった。……斎藤ってさ」
「うん」
「どっか出かける時、必ず最初にどこ行くか言うよな。遠足の時もそうだったし」
「あー、うん。そうだね。なんか、目的地も知らずに歩くのしんどくない? それ目的で元より歩くつもりなら話は別だけど」
「そうか? 」
「私の場合はね。だって、何か道沿いに店が立ち並んでたりしたらいいけど、そういう所ばっかりじゃないし。だから、最初に目的地は言うようにしてる」
「……なるほどな」
「そうそう。っていうことで、南禅寺行きます」
「はーい」
鈴木が間延びした声を上げる。まだ眠そうだ。
「何時に寝たの? 」
「ん⋯⋯寝てない」
「え!? 寝てないの!? 」
「うん」
「なんで? 」
「なんでって眠れなかったから⋯⋯。斎藤はちゃんと寝れたみたいだな」
若干不機嫌な声で鈴木が言う。少し昔のことを思い出し、体が震えた。
⋯⋯落ち着け。今と昔は違う。
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