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どうやって、この空気を脱しようか。家族連れやカップルの楽しそうな声が響く中、ここだけ空気が凍っている。
「⋯⋯長い脚。鈴木の長い脚がいいなって思ったの! 私、脚そんなに長くないから、石を飛んで進まなきゃだし」
「そういうことか⋯⋯」
鈴木が手を私に差し出す。
「少し支えたら、楽に歩けるんじゃない? 」
鈴木の骨ばった手をじっと見る。恐る恐る手のひらに自分の手をのせた。
手の大きさが2回りほど違うことを思い知らされる。
「握るよ」
鈴木は私に知らせた後、ゆっくりと手を握る。私が一つ一つの動作にびくびくしてしまうから、こうしてくれたのだろうか?
そのことに申し訳なさを感じながら、ゆっくり私もその手を握り返す。
私よりもほんの僅か温かく、明らかなほど大きいその手を感じて、あぁ、それでも私はこの人が私にしたことは一生許すことはできないのかもしれないと思った。
……そして、私が鈴木にしたことも許されるものではない。
「どうかした? 」
握った手をじっと見る私を不審に思ったのだろう。鈴木が尋ねる。考えていることがばれないように笑みを作り、鈴木を見上げた。
「いや、手大きいなって思って」
「⋯⋯まぁ、一応男女だからな」
男女の部分を強調して鈴木は言う。
「だよね」
自分でも、当たり前のことを言っていたなと反省する。
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