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鈴木に手を引かれて歩く道は確かに楽だった。先ほどのように石を飛んで歩く必要もない。石の境目に来たら、手を傷めない程度に引っ張ってくれているからだ。
引っ張られながら歩いていると、いつの間にか線路の真ん中あたりまで来ていた。
⋯⋯危うく、本題を忘れるところだった。
「鈴木」
「ん? 」
「ここの線路の名称は知ってる? 」
「知らない」
線路の存在すら知らなかった鈴木だ。そうだろうなと頷く。
「ここは蹴上インクラインっていうの」
「インクライン? 」
「インクラインっていうのは、傾斜がある道に線路を引いて、荷物や船を運搬するところっていう意味。ここは、船を主に運搬していたらしいよ」
「へぇ」
「ちなみにここは世界最長の傾斜鉄道」
「ここが? 」
「うん」
「それはすごいな……」
鈴木が驚いたように立ち止まって、線路のその先を見つめる。
「明治時代に作られて、今の今まで残ってる。インクラインとして使われてこそいないけどね。それってすごいことだと思わない? 」
笑い合いながら、写真を撮っている人たちを見る。
「多少の景色の違いはあれど、皆ここで生きた人はこれを見てきた……」
そして、インクラインもまた、その光景を見てきたのだろう。
「……そう見ると少し変わって見える気がする」
「それはよかった」
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