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この調子で続けていけば、鈴木も少しは歴史を好きになってくれるだろうか?
そうだといいなと本当に思う。
私は鈴木から色々なものを奪ってしまったから、何かを返したい。
だって、奪ったことに罪悪感は感じているけど、反省の気持ちは私の中に一切合切ないのだから。後悔はあっても。
「これって、どこまで歩くんだ?」
「疲れた?」
これから更に歩く予定だが、変更した方がいいだろうか?
この道はお世辞にも歩きやすいとは言えないし、しかも鈴木は私の手を引っ張ってくれている。疲労も2倍だろう。
「いや、疲れてない。けど……」
鈴木が目の前を指す。
「もう、線路終わるぞ」
線路は途中で途切れており、その先はない。だが、横に階段のようなものがある。
「横に階段があるでしょ? 」
「あぁ」
「あそこ登って、さらに進めば南禅寺につくから」
「へぇ」
階段を上り、さらに歩く。ふと、途中で鈴木が足を止めた。
「銅像が立ってるな」
小さい広場のようなところに銅像がぽつんと立っていた。
その周りを子供たちが駆け回っている。地元の子だろうか。
鈴木は銅像に近寄り、プレートの字を読み上げた。
「田辺朔郎博士像? ⋯⋯聞いたことないな」
「京都近代化の功労者だよ」
「功労者? 随分若いみたいだけど」
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