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銅像から離れ、さらに奥へと向かう。横には森林が広がっており、流れている水の音が聞こえた。
「さっきと比べて人いないな」
「さっきが多かったから、ここ来るとビックリするよね」
「うん」
いざ、誰もいない場所で二人きりになると話題が思い浮かばない。
「⋯⋯斎藤はどこの大学行くつもりなの? 」
静かな空間に鈴木の声が響く。
「大学? まだ、考えてないなぁ」
「だよな⋯⋯」
「鈴木は? 」
「俺は、とりあえず関西圏の大学に行こうと思ってる」
家にそんなにお金があるわけでもないしなと鈴木がつぶやく。
「私もそれは同じかな。東京行ってみたい気もするけど」
「東京か⋯⋯」
「東京行って、博物館めぐりしたい。特に東京国立科学博物館」
「東京国立科学博物館⋯⋯。斎藤、理系苦手じゃなかったけ? 」
「うん、苦手、数式とか見たくもない」
「なのに、科学博物館? 」
「数式とかはやりたくないけど、原理を知るのは好きだから。それに、化石があるし」
「化石? 化石好きなの? 」
「うん」
「へぇ」
鈴木が驚いたようにニ、三回瞬きをする。
「初めて知った⋯⋯」
「あまり言ってないからね」
「じゃあ、理系に進めばよかったのに」
「⋯⋯理系難しかったから」
進めるなら進みたかった。でも、私にはとても難しく感じたのだ。
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