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決して頭の悪いほうではないと思う。今通っている学校だって、進学校といわれるところだ。
⋯⋯でも、頭が賢いわけでもない。
「そこは努力でどうにかなるだろ。必要があれば、俺も教えたし」
世の中には努力だけではどうにもならないこともある。
そう言おうとして、やめた。鈴木が歩ける状態になるために、リハビリをしていた姿を思い出したからだ。
「⋯⋯それは」
そんなこと言わないでほしい。自分の心の中で決着をもうつけたのに。
「化石が好きなんだったら、古生物学とか」
古生物学⋯⋯。私が一時期、本気で考えていた分野だ。そして、あきらめた分野でもある。
「もう、無理だよ。文系選択しちゃったし」
そうだ。もう遅い。クラスだってもう決まってしまったし、変更は不可能だ。
「変更できるぞ? 」
「え? 」
立ち止まって鈴木を見ると、鈴木は振り返る。
「前に聞いたんだ。先生に質問しに行ったときに。俺らの何代か前に文転申し出た生徒がいるらしくて、それ以来二年の一学期中は変更可能にしたらしい」
「へぇ」
のどが渇いて、張り付く。
「あまり、周知させていないらしいけどな。気軽に言い出す生徒がいても困るから。自主的に来たら、内容次第では許可するらしい」
「そうなんだ⋯⋯」
やめてくれ。そんな今更⋯⋯。
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