1章

20/42

24人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
 決して頭の悪いほうではないと思う。今通っている学校だって、進学校といわれるところだ。  ⋯⋯でも、頭が賢いわけでもない。 「そこは努力でどうにかなるだろ。必要があれば、俺も教えたし」  世の中には努力だけではどうにもならないこともある。  そう言おうとして、やめた。鈴木が歩ける状態になるために、リハビリをしていた姿を思い出したからだ。 「⋯⋯それは」  そんなこと言わないでほしい。自分の心の中で決着をもうつけたのに。 「化石が好きなんだったら、古生物学とか」  古生物学⋯⋯。私が一時期、本気で考えていた分野だ。そして、あきらめた分野でもある。 「もう、無理だよ。文系選択しちゃったし」  そうだ。もう遅い。クラスだってもう決まってしまったし、変更は不可能だ。 「変更できるぞ? 」 「え? 」  立ち止まって鈴木を見ると、鈴木は振り返る。 「前に聞いたんだ。先生に質問しに行ったときに。俺らの何代か前に文転申し出た生徒がいるらしくて、それ以来二年の一学期中は変更可能にしたらしい」 「へぇ」  のどが渇いて、張り付く。 「あまり、周知させていないらしいけどな。気軽に言い出す生徒がいても困るから。自主的に来たら、内容次第では許可するらしい」 「そうなんだ⋯⋯」  やめてくれ。そんな今更⋯⋯。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加