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階段を降り終わって、鈴木を見上げると、顔をそらされる。
「斎藤、俺にそういう感じの言葉言わない方がいいって言ってるけど、斎藤も大概だからな」
「え? いや、でも、思った通りの事言ってるだけだよ? 」
「なら、余計タチが悪い」
「それ、ブーメランになってる」
「……俺はちゃんと考えて言ってるよ」
その言葉の意味を考えようとして、やめた。引き続き、階段を降りて、水路閣を見上げる。
やっぱりいつ来ても、同じ感覚を味わう。隔離した別世界に来たような感覚。
自分がまるでいなくなったようで、とても落ち着く。
隣を見ると、鈴木がじっと水路閣を見上げていた。
「ここだけ、別世界みたいだな」
「だよね⋯⋯」
自分と同じことを感じた人が隣にいると思うとなんだか嬉しい。
「さっき歩いてきたところあるでしょ」
「横に水が流れてる⋯⋯」
「そう。琵琶湖疎水っていうんだけど、実はね琵琶湖の水を20キロも離れた京都にまで山々を貫いて運ぶという水路の建設計画は、豊臣秀吉の時代にも考えられていたの」
「え? そんな昔から? 」
「ビックリするよね。私も初めて知ったとき驚いた。でもね、それはあまりにも難工事のために断念されてたんだ」
「⋯⋯そうだろうな」
そりゃあ、無理だろと鈴木の顔にありありと書かれている。
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