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「うん。田辺朔郎はなるべく景観を壊さないように作ったんじゃないかってこれを見ると思うんだ。だって、こんなに馴染んでいるんだもの」
「⋯⋯だな。不可能を可能にした天才か」
「そうだね。私もその言葉がぴったりだと思う」
こうやって実際にその時にあったものを見ながら、思いをはせるとその時代に行ったような気になる。
しばらく、二人して無言で立ち尽くす。
不可能を可能に。
比べるなんておこがましいかもしれないけど、私も今から頑張れば、数学ができるようになるだろうか。
古生物学を学べるようになれるだろうか。
目頭が熱くなる。
「斎藤? 目に何か入ったか? 」
「え? 」
鈴木の目が私を映す。
「いや、なんでもないよ」
今考えていたことをバレたくはなくて、鈴木の手から自分の手をするりと抜き、少し歩いてから笑顔を作って振り返った。
「じゃあ、次行こうか」
鈴木はなぜか目を見開いて、そのあと眩しい物でも見るように、目を細めた。
「あぁ」
先ほどのインクラインから琵琶湖疎水を通り、水路閣を目指したときと違い、すぐに目的の場所についた。
「これもまた、重厚感があるな」
南禅寺三門を見上げる。
「京都三大三門のうちの一つなんだ。折角だし、ここの上登ろうか」
「え? 登れるのか? 」
「うん。三門の端に券が売ってるの」
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