1章

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 不思議なもので、いくら英語の知識があろうといざ、話しかけられると何を言ったらいいのかわからない。  あたふたしていると、鈴木が1歩前に出てにこやかな顔で話し出す。  スマホを預かると、どうやらカップルで来たようで男の人は女の人の元へ小走りで向かい、こっちを向いた。  スマホを持ちながら、鈴木が写真を撮っている。  ……こういう所が1番の鈴木と私の違いなのだろう。  さっき、鈴木が使っていた英語は難しいものではなかったし、発音もお粗末なものだ。  でも、こうやってコミュニケーションが取れている。  私はコミュニケーションさえ取れない。  やっぱり、私は鈴木とは釣り合わない。  離れるのが正しいのだろうか?……いや、それが1番の解決策なのは分かっていたじゃないか。  自嘲気味な笑みが漏れる。  認めたくなかっただけだ。  元よりいじめっ子といじめられっ子が何もなしに仲良く出来るわけない。  私と鈴木が今でも付き合えているのは、共依存しているからだ。  正確に言うと、私がそうなると分かっててそうしたのだ。そうなるように仕向けたのだ。  なら、離れるのは私からであるべき。元より、鈴木の人生設計に本来ならいない人間だ。  なら、跡形もなく消えることだってできるはず。  今日を最後にしよう。  そう結論づけると心なしか少し楽になったような気がした。
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