1章

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 カップルにスマホを返した鈴木が自分のスマホをカップルに渡し、こっちに来る。 「折角だし、写真を撮ろう」  さっき、決心したのに形に残るものを残すということに戸惑っていると、鈴木が私の手を引く。  京都の街並みが背景で映るように並ぶ。  スリーツーワンと何枚かカップルが言いながら、撮ってくれているところで気がついた。  今も鈴木と手を繋ぎっぱなしだ。  ……これはまずい。  手をはなそうとしても、もう既に手遅れで写真は撮り終わったあとだった。  鈴木がカップルからスマホを受け取り、私に撮った写真を見せてくる。  あぁ、やっぱり手を繋いで写ってしまっている。これではカップル写真じゃないか。  落ち込もうとしても、どこか嬉しいと感じてしまっている自分に気づいて、苦々しい気持ちになる。  鈴木のサンキューという声で意識を戻される。自分も慌ててサンキューというとカップルが笑って手を振り返してくれた。  それに手を振り返し、見えなくなって手を下ろす。 「じゃあ、降りるか」  鈴木の後姿を目で追う。頭の中がはっきりしない。  鈴木が階段を下りている姿を見て、目が覚めた。  ⋯⋯ここの階段が急なことすっかり忘れてた。これ、脚滑らしたら完璧に鈴木巻き込むよな。  背中に嫌な冷汗がつたう。
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