24人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
カップルにスマホを返した鈴木が自分のスマホをカップルに渡し、こっちに来る。
「折角だし、写真を撮ろう」
さっき、決心したのに形に残るものを残すということに戸惑っていると、鈴木が私の手を引く。
京都の街並みが背景で映るように並ぶ。
スリーツーワンと何枚かカップルが言いながら、撮ってくれているところで気がついた。
今も鈴木と手を繋ぎっぱなしだ。
……これはまずい。
手をはなそうとしても、もう既に手遅れで写真は撮り終わったあとだった。
鈴木がカップルからスマホを受け取り、私に撮った写真を見せてくる。
あぁ、やっぱり手を繋いで写ってしまっている。これではカップル写真じゃないか。
落ち込もうとしても、どこか嬉しいと感じてしまっている自分に気づいて、苦々しい気持ちになる。
鈴木のサンキューという声で意識を戻される。自分も慌ててサンキューというとカップルが笑って手を振り返してくれた。
それに手を振り返し、見えなくなって手を下ろす。
「じゃあ、降りるか」
鈴木の後姿を目で追う。頭の中がはっきりしない。
鈴木が階段を下りている姿を見て、目が覚めた。
⋯⋯ここの階段が急なことすっかり忘れてた。これ、脚滑らしたら完璧に鈴木巻き込むよな。
背中に嫌な冷汗がつたう。
最初のコメントを投稿しよう!