1章

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 手すりをガッとつかみ、階段に座りながら一段一段おりる。幸いなことに、後ろには人がいなかったため、落ち着いて降りることができた。  ほっと息を吐くと、視線を感じ鈴木を見る。 「⋯⋯なに? 」 「いや、お店どこ行くのかなと」 「食べに行くところかぁ。おばんざいとかって好き? 」 「おばんざいか。嫌いではないよ」 「じゃあ、そこ行こうか」  ◆  お腹いっぱいになった腹をさする。⋯⋯思ったよりも量が多かった。  でも、鈴木にとっては丁度いい量だったようで、満足げだ。  のんびり湯飲みでお茶を飲んでいる鈴木を見る 「もうそろそろ出る? 」 「あぁ、そうだな」  店の会計を済ませ、外に出る。 「今から、平安神宮に行こうと思う」 「平安神宮……平安京があったところ? 」 「うん。ここから神宮通りまで五分もかからないから」 「そうなのか? 」  頷くと、鈴木がなるほどと言いながら頷いた。 「じゃあ、行こうか」  歩き始める。 「⋯⋯平安神宮ってやっぱり平安時代に建てられたのか? 」 「それがね、違うんだよ」  今日までに平安神宮について、調べてきたことを思い出しながら話す。 「私も平安神宮って、平安時代に建ったものとばかり思ってたんだけどね、建ったのって明治時代なんだって」 「明治時代? それまたなんで⋯⋯」
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